刑事司法に市民感覚を反映させる仕組みとして、裁判員制度と検察審査会(検審)制度がある。本稿では、最近、論議を呼んでいる後者について検討したい。
≪学説、判例への反証不十分≫
検審は検察官が不起訴処分とした事件を審査したうえで、「不起訴相当」「不起訴不当」「起訴相当」の各議決を行う。しかし、議決には法的拘束力がなく、「起訴相当」の議決を受けても、検察官は不起訴処分を維持することが可能だった。検審制度の本来あるべき趣旨を徹底すべく、検審が2回、「起訴相当」と議決すれば起訴義務が生じるよう法改正がなされ、裁判員制度と歩調を合わせ2009年5月から施行された。
以来、4年余りで「強制起訴」されたケースは7件を数える。その第1号となったのが、死者11人、負傷者247人を出した01年7月の明石歩道橋事故であり、元明石署副署長が業務上過失致死傷罪に問われた。しかし、神戸地裁での裁判はこの2月20日に、「公訴時効完成による免訴」で幕を閉じた。
法改正前に2回、元副署長を起訴相当と議決していた検審は改正後さらに2回、同じ議決をし、その結果、10年4月に全国初の強制起訴に至ったものである。
最大の焦点のひとつが、その時点ではすでに公訴時効(5年)が完成していたことだった。検審は「元副署長は(起訴ずみの)元同署地域官と業務上過失致死傷罪の共同正犯が成立し、仮に成立しないとしても、元地域官の過失とが競合して本件事故が発生したのであるから、元副署長についても時効も停止している」として時効未完成との立場を主張した。
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